2016年8月21日日曜日

海外MBA出願対策 総論② 経歴の作り込み

海外MBA留学を目指されている方は、合格体験記や在校生・卒業生のブログ等から貪欲に情報収集されていることと思います。私もかつてはそうでした。幸いにして第一志望校から合格し、改めて先輩方の合格体験記やブログを読んでみると、「肝心なことが書かれていない」と感じるようになった。

欧米のビジネススクールの入学審査基準は、テストスコアだけではない。学歴、職歴、海外経験、課外活動の実績等が全面的に審査され、全ての審査基準を高いレベルでクリアして初めて入学許可が出される。したがって、ビジネススクールに願書を出す時点で、自身の経歴をしっかり作り込んでおかなければならい。

巷の合格体験記やブログでは、素晴らしい経歴を既に持っていることを前提にMBA出願対策を語っているので、多くの人にとってあまり参考にならないと思う。なぜなら、合格者が実際合格できたのは、出願対策プロセスというよりも、その人の経歴に拠るところが大きいからである。結局のところ、テストスコアも、エッセイも、インタビューも、出願者の経歴のプレゼンテーションに過ぎない。海外MBA出願を検討している人は、合格者のプレゼン対策ではなく、プレゼンの中身(つまりその人の経歴)を知らなければならない。そして、エッセイを書き始める前に、経歴の作り込みを完成させておく必要がある。

前置きが長くなってしまったが、海外MBA出願対策を見据えて、自身の経歴をどのように作り込めばよいのか、書きたいと思います。

ビジネススクールのアプリケーションフォームを見たことのない人は、一度見てみましょう。例えば、IMDのアプリケーションフォームは、下記のような構成になっています。(どの学校もだいたい同じ。)

①個人情報
②テストスコア
③学歴
④言語
⑤海外経験
⑥課外活動
⑦職歴
⑧キャリア目標
⑨エッセイ

欧米ビジネススクールでは、well-roundedな(多才な)学生が好まれる。「勉強も仕事もできて、国際経験豊富、スポーツ万能で楽器も弾ける、社交的なナイスガイ」というイメージだ。そういう人物像が目に浮かぶよう、アプリケーションフォームを作り込まなければならない。逆に言えば、そういうプロフィールになるよう、自身の経歴を作り込まなければならない。

④言語:文化的多様性を尊ぶ欧州スクールでは、マルチリンガルが評価される。純ドメの場合は、日本語と英語に加えて、もう一つ外国語を学習するべし。
⑤海外経験:最低でも1〜2年の海外経験はあって当たり前。職歴に海外勤務が含まれていると尚良い。あらゆる手段を用いて、海外勤務のチャンスを勝ち取るべし。
⑥課外活動:他のアプリカントと差別化を図りやすい項目。社会貢献的な活動が評価されやすい。純ドメの場合は、ここで海外経験の不足を補う必要がある。海外ボランティアやトーストマスターズクラブの活動がおすすめ。
⑦職歴:ビジネススクールの入学審査は、企業の採用活動と同様、慎重かつ保守的である。ローリスクな出願者に入学許可を出す傾向があり、やはり、MBA的なバックグラウンドの持ち主が有利であることは否定できない。

 <出身企業>
· 外資コンサルや投資銀行など、伝統的にMBAを積極採用する企業が好まれる
· 世界的に知名度のある企業や、大企業が好まれる
· アルムナイに会社先輩がいると有利
 <職種>
· 経営企画/財務/マーケティングなど、MBA的な職種が好まれる
· 現場系よりも本社系の職種のほうが好まれる
· 分析力やリーダーシップが問われる職種が好まれる

他方で、学校側は常にダイバーシティに配慮しているので、軍人、医師、官僚、芸術家など、非伝統的なバックグランドの持ち主は歓迎される。伝統的バックグラウンドのアプリカントは、同業のアプリカントと比較されるので、彼ら彼女らとどう差別化するかがポイントになる。非伝統的バックグラウンドのアプリカントは、自ずと差別化されているので、あえてMBAを取得する動機や、クラスへいかに貢献できるかが厳しく問われることになる。

バックグラウンドに関わらず、職歴のなかで最も注目されることは、「順調に出世しているかどうか」と「傑出した成果を出しているか」である。

「順調な出世」とは、2~3年ごとに職位が上がったり、新しい職務に取り組んでいたりしているかということである。日系企業であれば、入社2~3年目で一つ昇格し、5~6年目で主任職へ昇格するのが一般的である。年功序列で自動的に昇格する場合もあるだろうし、選抜試験が課される場合もあるだろう。いずれにせよ、組織のヒエラルキーを着実にステップアップしているかが精査される。また、出世の状況は、ジョブタイトル、給料、部下の人数、扱う予算規模、職務範囲などに明確に表れていなければならない。(アプリケーションフォームで詳しく書かされます。)

成長性の低い会社に勤めている場合、人事ローテーションが滞りがちなため、昇格如何に関わらず、同じ仕事を5~6年以上担当し続ける場合がある。この場合は、「順調に出世している」とは見なされないので、注意が必要だ。IMDでは、MBAプログラムの学生90人全員のクラスプロフィールがウェブで公開されているので参考にされたい。これを見ると、ほとんど全員が、職歴5~8年の中で、2~3つの異なる職務を経験した後、マネジャー職に就いていることが分かる。(スペースの都合上、職歴の長い人は、最初のほうの職歴を割愛している。)

出世の状況と合わせて、「成果の質」も精査される。投資銀行や戦略コンサル出身のアプリカントと比較されても見劣りしないような、スケールの大きいネタ(M&A、新規事業立上げ、海外進出、戦略立案等)が望ましい。いま一度、IMDクラスプロフィールを見てみよう。ほとんど全員が、ビジネスプロセスの上流で、経営インパクトの大きい仕事をしてきたことが分かる。

以上、まとめると、海外MBA出願を見据えるのならば、「5~8年のキャリアのなかで3~4つの職務を経験し、マネジャーレベルに昇格すること」「ビジネスプロセスの上流で、経営インパクトの大きい成果を上げること」がキャリア形成上の目標となる。これに海外勤務経験が加われば、理想的なプロフィールになる。


上記で書いたことの多くは、MBA受験プロセスを終えてから気づいたことです。出願対策においては、スコアメイクやエッセイなど、目先のタスクにどうしても意識が奪われてしまうが、結局、合格の決め手になるのは経歴全般、とりわけ職歴です。ですので、MBA留学を検討されている方は、テストスコアが出来上がるのを待たずに、いますぐエッセイカウンセラーの門を叩くことをお勧めします。そこで得られたアドバイスを踏まえて、経歴作りも含めて3〜4年かけてじっくり準備できれば完璧です。

2016年8月14日日曜日

海外MBA出願対策 総論① スコアメイク (GMAT / TOEFL / IELTS)

海外MBAの出願対策は、「出願要件を満たす対策」と、「合格を勝ち取るための対策」の2つに分かれる。

前者の「出願要件を満たす対策」とは、主に英語力テスト(TOEFLIELTS等)とGMATのスコアメイクを意味する。英語力については、各校がTOEFLまたはIELTSのスコアに最低基準を設けている場合がほとんどである。多くのビジネススクールでは、TOEFL 100点またはIELTS OA 7.0点を最低基準としているので、まずはこれをクリアすることが出願対策の最初のステップにして、最も困難なステップとなる。純ドメは、TOEFLまたはIELTSのスコアメイクに数百時間を費やすことになる。

GMATのスコアメイクも、実質的には「出願要件を満たす対策」である。英語力と異なり、GMATスコアに最低基準点は(表向きには)設けられておらず、スコアの良し悪しに関わらず、出願すること自体は可能である。しかし、実際のところは、各校が求める「基準点」が存在し、その点数をクリアしていなければ “Weak” Candidateとみなされ入学審査上不利になったり、書類審査の段階で「足切り」を喰ったりする可能性が高い。したがって、各校が開示している入学者平均点やスコアレンジ、およびGMATに関する学校のポリシー(基準点の有無、および基準適用のシビアさ等)を理解したうえで、合格のために必要十分なスコアを見極める必要がある。ちなみに、トップスクール志望者は、700点以上を目指すのが一般的である。昨今はGMATスコアがインフレしており、720点以上ないと安心できないという説もよく聞く。

   必要スコアを見極める際は、AGOSが公表している出願結果データが役に立つ。オンラインサービスLOGIN 学習ツール 出願結果参考データ

IMDは、出願時にTOEFLIELTSのテストスコア提出を求めない稀有な学校である。(英語力は最終選考会で徹底的にチェックされるので、合格するためには十分な英語力が必須である。)GMATについては、入学者の80%スコアレンジが620750であるので、真ん中へんの680点前後が狙い目となる。

下表は、AGOSが集計した出願結果データに基づき、GMATスコア別に合否結果をまとめたものである。■=1人を表す。これを見ると660点を境目に、合格率が大きく異なることが分かる。サンプル数が少ないので断定は危険だが、680点前後に閾値があるのではないかと推測することができる。

 





















GMATスコアは、入学審査の数ある基準の一つに過ぎず、不合格の決め手になることはあっても、合格の決め手になることはない。合格の決め手になるのは、「エッセイ」と「面接」であり、エッセイと面接の出来映えを左右するのが、その人の経歴の充実度合いである。次稿では、MBA出願対策としての、経歴の作り込み方について、詳しく書きたい。

2016年8月7日日曜日

海外MBA留学を目指してから、合格するまでの経緯

海外MBA留学を目指す場合、2つのコースのいずれかを辿ることになる。1つは、何年もかけて周到に準備する「積年の努力」コース。もう1つは、半年〜1年程度の短い準備期間で合格を勝ち取る「短期決戦」コース。

後者の「短期決戦」コースは、TOEFL・GMATのスコアメイクを3〜6ヶ月程度で完了できることが前提となる。したがって、帰国子女など、既に英語力が出来上がっている人でなければ「短期決戦」コースは選べない。当然ながら、純ドメの私は、前者の「積年の努力」コースを辿っている。

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2008〜09年(学生時代)
 ・戦略コンサル・投資銀行業界に興味を持つ
 ・両業界のインターンシップに参加
   ⇒周りのレベルの高さに自信喪失
 ・MBAについて興味を持ち始める
2010年(社会人1年目)
 ・日系メーカーに新卒入社
 ・社費MBA留学へ応募することを目指す
  (入社4年目以降でないと応募できない)
2011〜12年(社会人2〜3年目)
 ・社費MBA留学応募を見据えて、
  社内での実績作りに専念する
2013年(社会人4年目)
 ・MBA出願準備開始
 ・予備校(濱口塾)に入塾
 ・TOEFL勉強開始。初受験 87点
 ・会社の業績不振、社費MBA留学制度の凍結
2014年(社会人5年目)
 ・新会社設立プロジェクトに参画
 ・主任職への昇格試験
 ・仕事と昇格試験で多忙を極め、勉強中断
2015年(社会人6年目)
 ・1月:MBA出願準備に専念することを決意
     2016年1月出願/9月入学を目指す
 ・6月:TOEFL受験14回目 101点
      ⇒GMAT対策へ移行
 ・9月:GMAT初受験 580点
     仕事が多忙を極める     
      ⇒2016年1月出願/9月入学を諦める
 ・12月:GMAT受験2回目 690点
2016年 (社会人7年目)
 ・1月:GMAT受験3回目 710点 ⇒終了
     エッセイカウンセラーと契約
     社費MBA留学応募 ⇒不合格
 ・2月:TOEFL受験20回目 105点 ⇒終了
 ・3月:IMD出願(第2ラウンド)
 ・4月:INSEAD出願(第2ラウンド)
 ・5月:IMD面接@シンガポール
      ⇒合格
 ・6月:INSEAD面接@東京
      ⇒ウエイトリスト
 ・7月:IMD・INSEADキャンパスビジット
      ⇒IMDに進学することに決める
      ⇒INSEAD辞退
      ⇒MBA受験終了
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以上のとおり、MBA留学を目指し始めてから6年、予備校に通い始めてから3年、MBA出願準備に専念してから1年半の年月を経て、幸いにして第一志望校から合格を勝ち取ることができました。

今、改めて振り返ってみると、新入社員のころから、MBA留学を見据えて、コツコツと仕込みを行ってきたことが奏功したと感じます。次稿では、このことについて詳しく書きたいと思います。

2016年8月6日土曜日

ブログの概要

2017年1月より1年間、スイスの経営大学院 IMD Business School のMBAプログラムに留学することになりました。留学での学びをここに書き留めると同時に、IMDおよび他校のMBA留学を目指されている方々の参考になれば幸いです。

<著者のスペック>
 ・男性、30歳前半、純ドメ、私費留学
 ・学歴:大学院卒(文系)
 ・職歴:日系メーカーの経営企画/管理(6.5年)
 ・TOEFL 105, GMAT 710
 ・GPA:学部 3.4  大学院 2.7(汗)

開設の辞

無性に文章を書きたくなるときがある。

心の中にわだかまるもモヤモヤとしたものに、明確な形を与えたいときがある。

今、人生の岐路に立つ中で、再び執筆欲が沸いてきたので、当ブログを立ち上げました。自分の身の周りの出来事、見聞きしたこと、心の揺れ動き等々を、気の赴くままに書き綴りたいと思います。

また同時に、主にMBA留学を目指されている方々に向けて、私の経験をシェアしていきたいと思います。私自身、先輩方のブログには大変助けられましたので、この機に恩送りできればと思います。